世界の国々を着物で表現!KIMONOプロジェクトに込めた技術と想いを海外へ
世界各国・地域をモチーフにした着物制作で業界再興のきっかけを作るはずだったKIMONOプロジェクト。福岡県久留米市にある呉服店社長が「着物を通じて海外の方をおもてなしできないか」と考えたことで始まりました。それぞれの国をイメージした振袖は、着物職人の魂がこもった唯一無二の作品です。当初の予定通り、2020年6月までに世界213カ国の着物はすべて完成しました。東京オリンピックでのお披露目を目標に掲げていたものの、新型コロナウイルス感染拡大によりオリンピックは延期に…。式全体の演出について検討した結果、関連行事での活用は実現しませんでした。
着物は日本人の和文化が凝縮した民族衣装
四季折々の豊かな自然を感じられる日本人ならではの感性を表した着物。卓越した職人技と研ぎ澄まされた美的センスの結晶です。華やかな色柄、結い上げられた髪、美しい立ち振る舞いは海外からも高く評価を受けています。
しかし、明治時代から始まった西洋文化の影響で洋装化が急激に進み、着物の需要は下がっていきました。染め、手描き、絞り、箔、刺繍など着物作りには多くの職人が携わりますが、市場の冷え込みが続くと次世代へ継承できなくなってしまいます。
高い注目を集めるオリンピックは着物や帯の美しさを国内外に発信できるチャンス!古くから受け継いできた伝統技術で海外の方々を応援できるなんて最高のおもてなしではないでしょうか。
世界がひとつに!国境を越える着物文化
2014年にKIMONOプロジェクトが始動して以来、2015年のミラノ万博やG7、アスタナ万博、第8回太平洋・島サミット、G20大阪サミット、ラグビーW杯オープニングセレモニー、国連創設75周年記念事業調印式典など国際的なシーンに華を添えてきました。世界中が注目するビッグイベントに着物を登場させ、平和へのメッセージを届けたのです。
今回のプロジェクトで制作された着物は成人式や祝賀会など、晴れの舞台にふさわしい振袖で統一されています。各国の自然・文化・歴史を反映した絵柄で、世界にたった一枚しかないオリジナル振袖です。制作費用はプロジェクトに賛同する企業や個人から募った寄付金で賄われました。
完成した世界の着物
アメリカの着物を担当したのは東京で創作活動をおこなう友禅作家です。アメリカのシンボルである白頭鷲や50州の州花を描くことで世界一の大国を表現しました。極限の集中力を発揮した末に生み出された色彩の美しさは日本が誇る職人技です。
アフリカ各地の気候と地形が存在するカメルーン。国旗の赤・黄・緑を大胆に使うことで、部族文化の伝統と力強いイメージを融合させた作品です。カメルーンの立体的なコインをヒントにデザインされた蝶が印象的!キラキラ輝く金属糸であしらわれていて高雅な輝きを放っています。
リトアニア共和国の絵柄に選ばれたのは聖ペテロ・パウロ教会です。教会内部をデザインの根本に、リトアニアの国花「ヘンルーダ」、観光名所「十字架の丘」、湖に浮かぶ城、カウナス領事館に赴任していた杉原千畝さんの執務室を一枚の着物に表現しています。
今回ご紹介した着物はプロジェクトが制作した作品の一部!
「着物を通じて世界へ平和を伝えたい」「伝統技術継承への道を繋ぎたい」「美しい着物姿で海外からの観光客をおもてなししたい」そういった夢や想いに賛同した人達が紡ぐ唯一無二の着物です。
世界213カ国の着物が揃うことを楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。
【公式】一般社団法人イマジンワンワールド | Imagine One World | KIMONO PROJECT | 日本
※各国をイメージして作られた着物は上記リンクの「着物一覧」よりご覧になれます。
願い叶わず…五輪でお披露目されることはなかった
日本オリンピック委員会関係者や大会組織委員会の評価は高かったもののKIMONOプロジェクトのお披露目は叶いませんでした。「選手団入場式の衣装予算は一着1万円以下」という予算削減案が可決されたため、コンパニオン衣装として不採用になったそうです。
着物が奏でる平和の音色は日本と世界を繋ぐ友好の架け橋。一流職人が手がけた逸品を海外でお披露目されることを願います。